夢を持って踏み出したはずだった。
自動車が好きで、手に職をつけたくて、専門学校に進んだ。
“ここならきっとやれる”って思ってた。周りも似たようなもんだろうと、どこかで安心していた。
でも現実は、そんな甘くなかった・・・。
最初のつまずきは、授業だった。
構造や仕組みを学ぶ座学で、まず「読む」「理解する」「覚える」ことが全然できなかった。
それに気づいたのは、自分だけがノートを取るのに必死で、周りはスッと頭に入ってるように見えた時だった。
それでも、座学が苦手でも「整備は実技だろ」と思ってた。
手を動かして学ぶ方が得意なはず。そう信じていた。
でも現実は、さらに残酷だった。
先生に言われた。
「お前は、今まで見てきた中でも、トップクラスに手が不器用だな」って。
笑い話じゃなかった。本当に笑えなかった。
“触ってなんぼ”の整備の世界で、不器用って…致命的だった。
クラスの中で落ちこぼれた。
授業についていけず、実習でも失敗ばかり。
先生からは「このままじゃ卒業は難しい」とまで言われ、親まで呼ばれた。
心のどこかで「好きなことならやれる」と思っていた自分の幻想が、ガラガラと音を立てて崩れた瞬間だった。
努力で何とかなる、そう信じていたけど、現実はとんでもなく冷たかった。
【転機】
それでも、諦めたくなかった。
「自分には何もない」と思わされる毎日だったけど、それでも“ここで終わり”にはしたくなかった。
国家資格の「二級整備士」を取れば、道は拓ける。
実技が免除されるなら、せめて筆記だけでもと、人生で初めて“本気で勉強”した。
結果は──合格。
自分でも信じられなかったけど、それが唯一、心から「やった」と言える瞬間だった。
【だけど現実は続く】
大手ディーラーに整備士として就職できた。
けれど、そこでまたぶち当たる。
現場では“ミスは命取り”なのに、僕はミスを重ねた。
上司からは「不器用すぎる」と何度も言われた。
「お前はダメだ」と言われるたびに、「ですよね…」としか思えなかった。
出来損ない。
自分には、本当に何もない。
好きだったことさえ、向いてなかった。
【結び】
この頃の僕は、毎日が「劣等感」と「自己否定」の繰り返しだった。
でもそれでも、どこかでまだ「自分を諦めきれない」自分がいた。
“何もできない自分”が、それでもまだ、人生を変えようともがいてた。
次回予告
収入・将来・結婚──「このままじゃ終われない」と決断した次の一手。
次回は、人生を変えるために選んだ“転職”と、そこで待っていた「また違った現実」の話をします。
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